星新一は、「Amazon Mechanical Turk」をアイロニーとして予測した。

Amazon Mechanical Turk」とは、コンピューター処理の一部に人間の判断力を利用しようという試み。これを知ったとき、僕は、「星新一がこんなことを描いていたな」と思った。


探してみると、それは、星新一の短編集『ひとにぎりの未来』『爆発』の中にあった。

むこうから声が伝わってくる。「炎という言葉と、葉という言葉とを関連させると、どんなものを想像しますか」


「さあ……」


「ゆっくりお考えになってけっこうです。心に浮んだことを、どんなことでもかまいませんから、つぎつぎとのべて下さい……」


 これが仕事なのだ。大部分の人が、こんな仕事をしている。送られてくる質問は、いろいろと変化する。このような結合による連想のこともあれば、高等数学の問題になったり、薬品に関することだったりする。


 どう答えたらいい、どう答えたから悪いというものではない。答えなくたってかまわないのだ。


 その報酬はみな一律。すなわち、生活が保障されているということだ。応答しなくてもいいのだが、ほかにすることもないので、だれも熱心に考えて答えをかえす。なんらかの形で社会のために働いていると思うのは、いい気持ちだ。


 これらの答え、世界じゅうからの何億、いや何十億、何百億という答えは、コンピューターにおさめられる。その結果、なにかが開発されるのだ。


 たとえば、この炎と葉との組合せから、新しい動く模様を思いつく人があったとすれば、テレビ画面の変化がそれだけ豊富になるかもしれない。


 もちろん、大部分はとるにたらない思いつきだ。しかし、全世界からの集計だから、相当な数になる。コンピューターが徹底的にふるいにかけても、いくつか残る。週に一つでも、月に一つでも、なにかが開発され実現すればそれでいい。

星新一は、この場面を、「人間が増え続けていることをのぞけば、技術が進歩しきっていて、いたれりつくせりな世界」の一部として描いている。

  • コンピューターの処理の一部を人間が受け持つ
  • 報酬を得られる


という点で、まったく、同じ。浮かんでくる情景ももいっしょ。星新一の描く未来像の輪郭のすごさに驚く。そして、「実現されることはないだろうな」というイメージを実現のほうに導くAmazonもすごい。


 ただ、僕はあまりこういう仕事で食べていきたいとは思わない。自分の考えたことによる成果は、たんなるコンピューターの処理の一部になり、成果はすべてお金という形でしか還元されなくなる。自分の出した成果が自分の評価を左右するものであってはじめて、仕事をするモチベーションになると思う。