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日々感じたこと、艦隊これくしょん、千年戦争アイギス、読書記録

速記の現在

 速記は、現状を見る限り、すたれてきている技術といっていいでしょう。 とくに、手書きによる符号式速記は廃れていくでしょう。 速記研究会の機関紙を創刊号から最終号まで読んだり、大会の結果を調べていて、 それを深く実感しています。部員の数、大会の出場校は年々減ってしまっています。将来、手書きの符号式速記が伝承されていくことになるとしても、弓道などのように、「伝統的技能」のような形ででしょう。実務で活躍することは少なくなるに違いありません。

 しかし、これまで速記が担当してきた「音声の文字化」という仕事は、重要性が高まるばかりです。たとえば、音声を文字化することで、聴覚障害者などが情報にアクセスしやすくなります。聴覚障害者ばかりではありません。音声を文字化、すなわちテキストデータにすることができれば、コンピューターによって検索する精度・速度がともに高くなり、すべての人にとってのアクセスが向上します。

 福祉、情報化が叫ばれている現代では、音声文字化の効率化は大きな課題です。文字の音声化と違って、人間がやれば時間もかかるし、機械などで自動的にやることは現在の技術ではできません。この課題にいま一番真剣に取り組んでいるのが、速記に携わってきた人たちだと思います。

 国会の速記者は、議事録の作成にコンピューターを導入してさらなる効率化を図ろうとしています。 裁判所の傍聴録を作っている速記官たちは、キーボード入力式の速記を開発、普及させています。 ボランティアでさまざまな講演に出向いては、その機械を使ってリアルタイムに字幕をつけているのも彼らです。 そして、このような活動をしていく上で、生かされているのが、 手書き速記によって蓄積されてきた知識なのです。

 漢字の使い方はどうすればいいか?句読点はどうすればいいか? どのような語句が聞き間違いやすいのか? 日本語で出てきやすい言葉は?こような技術は、 速記の研究によって磨かれてきたものです。 このサイトで紹介している「符合式速記」は、忘れ去られていくかもしれませんが、手書きの速記によって蓄積されてきた知識は、これからも生かされていくに違いありません。