速記の起源は、古代ローマにまでさかのぼります。 各地で、速記文字で書かれた碑文が見つかっており、 正確に何年、と言い切ることは難しいでしょう。 そういった中で、もっとも有名なのが、 古代ローマ時代の、ティロの速記です。 この速記は、使いこなすのに10年は要し、 奴隷によって書かれました。
この速記は、当時迫害を受けていたキリスト教の通信手段として使われました。 しかし、前述のように学習が非常に困難だったため、 指導者が惨殺されるという悲劇も起きています。(カッシアーノの悲劇)
なぜ学習するのが困難だったかというと、 個々の言葉に記号を割り当てたために、 覚えなければいけない記号が膨大になったからです。
表音的な速記理論を開発し、 「速記」の世界共通語となっているステノグラフィー という言葉をつくったのが、ジョン・ウィリスです。 表意的な速記から脱却することで、 覚えなければいけない文字は格段に少なくなり、 学習性が大きく改善されました。
その後は、各言語で、特徴にあわせた速記体系が形作られることになります。 アジアの言語で最初に速記体系を持ったのは、 日本でした。最初に指導が開始されたのが1882年。 議会や裁判所などで実用されました。
そして現在。速記が担ってきた「言葉の文字化」という仕事に関していえば、 「録音を元にコンピューターをつかって文字化する」 「特殊なキーボードと特殊な変換辞書を使ってリアルタイムで文字化する」 「音声を機械で認識して文字化する」 などの試みがなされています。 符号式の速記もまだまだ現役であり、 アメリカの医療現場などで、カルテを作る際など、 符号式速記が復権していると聞きます。