文字が利用される場合、「書かれる」か、 「読まれる」かのどちらかしかありません。
普段使っている文字は、 長年をかけて多くの人に改良されてきたものですから、 「書きやすさ」と、「読みやすさ」のバランスが うまくとれているといってよいでしょう。
思い出してください。普通の文字で、走り書きをしたとき、 あとで読めなくなってしまった経験があるのではないでしょうか。 同じように、速記は、「読みやすさ」を犠牲にして速くかけるように なっています。 どのようなことかというと、 速記符号は、書きやすい線に幾通りもの読み方をあててあったり、 表音記号が使われていたりすることによって、 文脈によって判断しなければいけないことが多く、 とても「読みにくい」のです。
それどころか、普通の文字しか読めない人は、 もちろん速記符号による記録をよめませんし、 符号の方式が違ったり文脈がわからなければ、 速記を知っている人でも速記符号による記録を判読できません。 速記符号によって書き取った状態の文章は、 記録としては不完全なものといえます。
ですから、速記符号による記録は 普通の文字に戻して始めてやっと 記録としての価値が出ることになります。 普通の文字に戻すまでが速記者の仕事であり、 速記の一部であるのです。
ちなみに、速記符号で書き取った記録を、 普通の文字に書きおこすことを「反訳」といいます。 また「速記符号」に対して、普通の文字のことを「国字」といいます。
- 作者: 川口晃玉
- 出版社/メーカー: 早稲田教育出版
- 発売日: 1994/12/01
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